東京地方裁判所 昭和50年(刑わ)1666号 判決
右の者に対する凶器準備集合、建造物侵入、暴力行為等処罰に関する法律違反被告事件について、当裁判所は、検察官峯益雄出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年に処する。
未決勾留日数中一八〇日を右刑に算入する。
この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
訴訟費用は、これを七分しその一を被告人に負担させる。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、反帝学評派に所属し、あるいはその主張に同調する者であるが、東京都目黒区<以下省略>aビル(所有者A1)三階に所在し、自派と対立抗争中の革マル派の事務所であるb社を襲撃しようと企て、
一 A2、A3、A4、A5、A6ほか二、三名の仲間の者と共同して前記b社内の革マル派に所属し、あるいはその主張に同調する者らの身体に危害を加える目的をもつて、昭和五〇年四月二二日午前六時五〇分ころ、前記aビル内及びその周辺において、鉄丸棒五本(昭和五〇年押第二〇八二号の6・9・14・15・25)、伸縮二段式鉄パイプ二本(同押号の34)、石塊一〇数個等を所持して集合し、もつて他人の身体に対し共同して危害を加える目的で凶器を準備して集合し、
二 前記A2ら五名ほか二、三名の仲間の者と共謀のうえ、前記の目的をもつて、前記時刻ころ、前記の凶器等を携行してA7の管理する前記aビル一階出入口から同ビル廊下及び階段に乱入し、もつて故なく人の看守する建造物に侵入したうえ、右A2ら五名ほか二、三名の仲間の者とともに、同ビル三階b社前廊下において、所携のエンジンカツター(昭和五〇年押第二〇八二号の35)を使用してb社出入口の鉄扉を破壊するとともに、同ビル二階及び三階等において前記鉄丸棒等で殴打したり、石塊を投げつけるなどしてb社の炊事場、便所、六畳間の窓ガラス合計八枚及び同ビル二階三階の日除け合計一〇枚等を破壊し(損害額合計一九万一、〇〇〇円相当)、もつて数人共同してA1所有の右器物を損壊し
たものである。
(証拠の標目)
一、 証人A7、同A8、同A9、同A10の当公判廷における各供述
一、 証人A11、同A12(以上第六回公判調書、以下回数のみ表示する。)、同A13、同A14(以上第七回)、同A15(第七、八回)、同A16(第八回)、同A17、同A18、同A19(以上第九回)、同A20、同A21(以上第一〇回)の公判調書中の各供述部分
一、 証人A22、同A23、同A24(以上第三回)、同A25(第四回)、同A26(第五回)、同A27(第一一回)の公判調書中の各供述部分
一、 証人A7(第四回)、同A28(第六回)、同A29(第一〇回)の公判調書中の各供述部分
一、 司法警察員A22作成の実況見分調書
一、 司法警察員A24作成の検証調書
一、 司法巡査A25、司法警察員A23作成の各写真撮影報告書
一、 司法警察員A12、同A13、同A19、司法巡査A18、同A21、同A16作成の各捜索差押調書
一、 検察事務官作成の併列写真帳作成報告書((1)乃至(6))
一、 領収書三通
一、 押収してある鉄丸棒五本、ロープ三本、ハンマー一丁、木製楯二個、ドアのノブ一個、さらし六枚、黒ビニール鞄一個、バルサン・ジエツトⅤ大型七個、ヤクレツト八個、バール一本、カツター一丁、斧一丁、青色ヘルメツト二個、防毒マスク二個、バルサンの底蓋二個、軍手一双、布製手提鞄一個、伸縮二段式鉄パイプ二本、エンジンカツター一台(昭和五〇年押第二〇八二号の6ないし35)、ヘルメツト一個、防風用メガネ一個、防毒用マスク一個、白衣一着、軍手一双、バンソウコウ一枚、肩あて一個、小手あて一個(同押号の36ないし43)、白衣一着、肩あて一個、小手あて一個、軍手一双(同押号の44ないし47)、白衣一着、軍手一双、プロテクター三個、ガスマスク一個、ヘルメツト一個(同押号の65ないし71)、ヘルメツト一個、ガスマスク一個、スキー用メガネ一個、軍手一双、小手あて一個、白衣一着(同押号の48ないし53)、白衣一着、ヘルメツト一個、ガスマスク一個、軍手一双、すねあて二個、肩あて一個、腕あて一個、胸あて一個(同押号の54ないし61)、白衣一着、小手あて一個、軍手一双(同押号の62ないし64)、機関誌「解放」一九七五年五月一日付一六〇号(同押号の72)
(法令の適用)
被告人の判示一の所為は刑法二〇八条の二第一項前段、罰金等臨時措置法三条一項一号に、同二の所為中、建造物侵入の点は刑法六〇条、一三〇条前段、罰金等臨時措置法三条一項一号に、共同して器物を損壊した点は暴力行為等処罰に関する法律一条(刑法二六一条)、罰金等臨時措置法三条一項二号にそれぞれ該当するところ、判示二の建造物侵入と共同器物損壊との間には手段結果の関係があるので刑法五四条一項後段、一〇条により一罪として犯情の重い暴力行為等処罰に関する法律違反の罪の刑で処断することとし、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により重い暴力行為等処罰に関する法律違反の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、被告人を懲役一年に処し、同法二一条を適用して未決勾留日数中一八〇日を本刑に算入し、同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予し、訴訟費用については刑事訴訟法一八一条一項本文によりその七分の一を被告人の負担とする。
被告人及び弁護人らは、被告人の本件行為は自派の主張と対立する革マル派からの度重なる違法な攻撃に対処するためにとられた防衛的なものであつたなど行動の正当性をるる主張するが、本件の罪責、態様にてらして理由がない。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 桑田連平 裁判官 羽渕清司 裁判官 八木良一)